大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和37年(家)12679号 審判 1963年4月24日

本国 英国 住所 東京都

申立人 アチソン・マクマナス・ハドソン(仮名) 他一名

本国 アメリカ合衆国 住所 申立人らに同じ

事件本人 ジョージ・シャイアン・フリッカ(仮名)

主文

申立人らが事件本人を養子とすることを許可する。

理由

申立人らは主文同旨の審判を求めた。よつて調査するに、

申立人アチソンは一九二六年八月一三日英国ヨークシャー州スカボローで生れ、申立人マリリンは同年八月三一日同国ケント州ロチエスターで生れ、いずれも英国国籍を有するものである。そして申立人アチソンは一九四九年一〇月アンドリューウェィン会社の雇傭員として来日したが一九五六年以来、東京都千代田区丸ノ内に本店を有する日本法人トレーダックス株式会社を創設しその代表取締役になつている。また申立人オードリーは一九五〇年三月来日し申立人アチソンと一九五二年七月一八日婚姻し肩書住所に同棲居住していること。事件本人はアメリカ合衆国国籍を有するカリーナアンフリッカ(一九三六年七月二二日アメリカ合衆国ワシントン州にて出生)を母として一九六二年八月五日東京第一国立病院で生れアメリカ合衆国国籍を有するものであるが母カリーナは高等学校教師をしており事件本人を自らの手で養育することは困難な事情にあつたため、日本国際社会事業団の紹介で申立人ら夫婦の養子とすることとし一九六二年八月一三日以来事件本人の養育を申立人夫婦に委ね申立人夫婦は現在日本国に永住して事件本人を養育する意向を有していること。

以上の事実が認められ、申立人ら及び事件本人のいずれもが東京都内に住所を有するものと認むべきであるから本件申立については当裁判所が管轄権を有すること明らかであり、申立人ら及び事件本人の本国においても本件の管轄権が日本国裁判所に存することを認容されるものと解する。

ところで本件は法例第一九条第一項第二七条第三項により申立人らについては英国法により事件本人についてはアメリカ合衆国ワシントン州の法律によるべきところ、いずれも養子縁組は裁判所の裁決によつて成立するものとされておるが、その養子縁組に関与する機関、関与する仕方、その性質において日本国における家庭裁判所の許可と著しい相違は認められない。

しかしてまたアメリカ合衆国ワシントン州法においては管轄権ある裁判所の所在地法によることとされているので、事件本人については日本国民法によることとなる。

よつて英国法(Adoption Act)及び日本国民法によつて調査するにいずれも申立人らが事件本人を養子とすることに妨げとなるべき事情はなく、養子縁組の成立は上記認定の事実に徴し事件本人の福祉を増進する所以でもあると認められるので当裁判所は本件申立を許可すべきものとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 綿引末男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例